 |
 |
 |
 |
 |
 |
2013年06月18日 |
 |
|
 |
エンデュランス競技のドーピング問題と中東諸国の馬のウエルフェアーについて
世界のエンデュランス競技をめぐる状況に、今、大きな変化が起きている。 事態の推移を要約し、馬と馬術競技を愛する日本の人々にご紹介したい。
口火を切ったのはスイス馬術連盟だった。 ついに、と言うべきだろう。 エンデュランスの国際大会に携わった人なら、近年のエンデュランス・ライドになにかが起こっていると感じていたはずだ。アラブ諸国の活躍、競技の高速化、ドーピング問題の悪化、馬のウェルフェアを軽視する事故の多発など、これまで見られなかったことに、気づかずにはいられまい。
2013年3月26日、スイス馬術連盟はFEIに書簡を送り、各国の馬術連盟にもその写しを送付した。この公開書簡では、「FEI規律によるエンデュランスの、ここ数年における後退」が指摘され、馬への虐待、異常なまでの骨折の頻発、エンデュランス・ライドにおける不正行為、ドーピング違反の著しい発生率などが問題とされた。(スイス馬術連盟の公開書簡の全文はこちら→ スイス馬術連盟の書簡)
じつは以前にも、スイス馬連はFEIに対し、エンデュランス・ホースのドーピング違反と競技の不正に対抗するための即時的かつ効果的な対策を講じてほしいと請願したことがある スイスの請願に続いて、フランス馬術連盟とベルギー馬術連盟も、2012年10月に、FEIに対して懸念の書簡を送った。
2012年10月2日付けのベルギーの書簡は、極度の疲労で死亡した馬や骨折の結果安楽死させられた馬の数が「想像を絶する高率に達している」と述べ、FEIに対し、「加害者が馬術競技から追放され、このような行為が永久になくなることを確実にするための必要な措置」を講じるように要求した。(ベルギー馬術連盟の書簡の全文はこちら→ ベルギー馬術連盟の書簡)
2012年10月12日付けのフランスの書簡は、エンデュランスの国際大会中に死亡した3頭の馬の例を示した。「エンデュランスの規律に関わるウェルフェアの問題」だと指摘し、「ここには、エンデュランスの規律に対する一般の認識を汚す危険がある」と強い懸念を表明した。(フランス馬術連盟の書簡の全文はこちら→ フランス馬術連盟の書簡 )
スイス馬術連盟の公開書簡がきっかけとなり、エンデュランス競技をめぐる状況とほかの競技種目についてのドーピング問題(中東諸国を除くとエンデュランス競技のドーピング件数が一番少なくクリーンな競技であるという実態。)と、ゴドルフィン(ドバイの首長シェイク・モハメドが設立した競走馬の経営母体)の調教師マームード・アル・ザルーニがアナボリックステロイド(イギリスで禁止薬物に指定されている筋肉増強剤)を馬に投与したことで有罪とされたことの報道がイギリスの新聞記事、テレビなどで紹介され、特にドーピング問題がクローズアップされてきた。
数多くの批判を受け、調教師が資格停止処分を受けたドバイが、イギリスで開催されるCEIエンデュランス・ライドからスポンサーを降り、ライドが中止される事態となった。
中東諸国を除いた各国で競技をおこなおうとする動きすら出てくる不穏な状況の中、ドバイ首長シェイク・モハメドは、ドバイにおけるアナボリックステロイドの使用を全面禁止にすることを発表した。
スイスはFEIの対応に対して不満を表明する。
FEI会長であるドバイのハヤ王妃が、関係者のオープンな議論の場としての円卓会議を呼びかけた。
以上が、6月半ばまでの動きであり、今後どちらへ向かうのか、いまだ不透明である。 トカゲの尻尾切りだけで終わってしまうのか、今までどおりドバイが金を出し続け、ドバイ国王たちだけ特別扱いされる国際大会が続くのか、見守っていきたい。
以下、資料として、イギリスの各報道機関による関連記事を紹介する。
資料@「エンデュランス・ライディング・ニュース」(4月28日付)(記事全文はこちら→ エンデュランス・ライディング・ニュースの記事 ) スイス、ベルギー、フランスのFEI宛て書簡を紹介した。
資料A「BBCスポーツ」(5月4日付)(記事全文はこちら→ BBCスポーツの記事) ゴドルフィン(ドバイの首長シェイク・モハメドが設立した競走馬の経営母体)の調教師マームード・アル・ザルーニがアナボリックステロイド(イギリスで禁止薬物に指定されている筋肉増強剤)を馬に投与したことで有罪とされたことを報道しつつ、過去の経緯を紹介した。
資料Bイギリス・エンデュランス協会は、5月8日、ユーストンパーク・ライドの中止を発表した。(発表の文章はこちら→ ユーストンパーク・ライド中止のお知らせ )
資料Cザ・テレグラフ紙(5月9日付)(記事全文はこちら→ 5月9日付ザ・テレグラフ紙の記事) アル・ザルーニ調教師の事件を紹介した。
資料Dザ・テレグラフ紙(5月16日付)(記事全文はこちら→ 月16日付ザ・テレグラフ紙の記事 ) シェイク・モハメドの娘婿ナセル王子の持論を紹介した。
資料Eザ・ホース&ハウンド紙(5月17日付)(記事全文はこちら→ ザ・ホース&ハウンド紙の記事) 今年のユーストン・パーク・ライドが、ドバイがスポンサーを降りたために中止されたことを論説し、新たに判明したスキャンダルを報道した。
資料Fザ・ガーディアン紙(5月23日付)(記事全文はこちら→ ザ・ガーディアン紙の記事) シェイク・モハメドがドバイでアナボリックステロイドの使用を禁止したことを報道した。
資料Gザ・クロニクル・オブ・ザ・ホース紙(6月12日付)(記事全文はこちら→ ザ・クロニクル・オブ・ザ・ホース紙の記事) ハヤ王妃が円卓会議を提案したことを報道した。
|
 |
|
 |
|
 |
 |
|
 |
 |