Arabian Horse Ranch 日本に、スポーツエンデュランスをもっと。
20090427
世界から
2009年 Git-R-Done April

例年の4月の大会よりも1週間早くGit-R-Doneの大会は4月12日に開催された。この1週間が大きな原因となり、強風と砂嵐、人馬にとっては大きな疲労の要因ともなる大会だった。それは、CEI3☆のCOC取得者の少なさが物語っていた。
一般参加者も一緒に走る中、160kmの参加者は16名、うち完走者9名。この中でCEI参加者は9名で、完走者3名、COC取得者(時速13kmキープ)1名という結果であった。
120km参加者は18名参加、15名完走で、うちCEIは6名完走という結果であった。

160km、120kmのCEI参加者の中に日本人ライダー160km2名、120km3名という多さであった。しかも120km3名は見事に全員完走―――資格取得の星を増やしました。160kmは小澤清司選手が14時間37分で完走。残念ながら、時速13kmをクリアできませんでした。蓮見清一選手は、第五レグ完走後、足の痛みが耐えがたくライダーズオプションで棄権となりました。160kmに参加した両選手とも、人馬同一のCOC取得を残すだけであり、残念です。でも、ケンタッキーの大会までに、まだ時間も機会もあるので、じっくり取り組んでいただきたいと思います。

遠藤選手は2☆1、3☆1を獲得となり、橘選手は2☆2個になり、西山選手は嬉しい2☆の獲得でした。



Git-R-Done参加レポート@   by 西山千香子

春と秋の1年に2度、ロサンゼルス近郊で行われるFEI公認のレース「Git-R-Done」。
今回私は、4月11日(土)に行われた春の大会に出場することとなりました。走行距離は75マイル(120km)。80kmまでしか完走経験がない私にとっては、初のチャレンジです。

アメリカ到着はレース前々日の9日(金)午後。チェックインと昼食を済ませ、いよいよ馬と対面です。
今回私の相棒となってくれたのは、6歳のアラブで「Genuine  Treasure」、通称“GT”というセン馬。若くて気さくなご夫婦がオーナーです。16ハンドの大きな馬でしっかり横幅もあり、その体格の良さに一瞬ひるみましたが、性格がとても人懐っこくて落ち着きがあり、“はじめての砂漠のレースもこの馬と一緒ならいけるかも…!”と初対面ながら心強く感じました。

10日(土)のベトチェクも無事に通過し、いよいよレース当日です。朝5時に集合して、5時半から下乗り。GTと、今回のライドパートナーである遠藤さんの馬(Steel)とは初対面だったので、スタートまでの約30分間、馬同士がお互いに馴れるよう、2頭でゆっくり常足を繰り返しました。やがて日も出て空も少し明るくなり、いよいよ時刻は6時に。下乗りの常足そのままに、ガイドのKimさんと合流して穏やかにスタートを切りました。

スタート後も、20分ほどはそれぞれの馬の様子を見ながらゆっくり常歩で走行。3人馬ともに身体があたたまってきたところで速歩を始めました。その後は、とにかくイーブンペースで進みます。途中、騎乗したまま速歩で歩様をチェックする「トロットバイ」を通過するのですが、イースターということで係りの方から卵型のケースに入ったキャンディをもらいました。そんなところも海外のレースの楽しさなのですね。

コースの脇には、カラーのリボンが付けられていて、1レグはピンク、2レグはブルー…といったように、色でレグを表しています。また、道が分岐しているところや、ウォーターポイントから出ていく道には、白い矢印がひかれてあり、ライダーに順路を示してくれます。
ただ、リボンはブッシュに結わえてあって、馬上からの目線よりもかなり下の位置についています。なので、ぼんやりしているとすぐ見落としそうになります。さらに白い矢印は、たくさんの馬が通過した後では、肝心な矢印の先が踏み消されていたこともあり、どこの大会でもやはり地図は必携だな、と改めて実感した次第です。

長い1レグが終わり、2レグに入ります。スタート時の寒さが嘘のように気温がどんどん上昇してきます。ウォーターポイントでは、馬たちも大きなブリキの桶から水をガブガブ。陽が高くなってくると、日差しで地面が白く平らに見えます。しかし、実は細かな砂地のアップダウンがあり、注意していないと思わぬ下りに前のめりにつまずいたりしがちで、前脚が心配になる箇所がいくつかありました。
レースの前に蓮見さんから、平坦地が長く続くコースでは、馬のひとつの部位に負担をかけ過ぎないよう、手前や腰の位置を意識的に変えること、とのアドバイスをもらっていました。そこで、コースのリボンを見落とさないようにという意味も含め、リボン毎に手前を変えながら走行しました。
そんなことでもしていないと、見た目の変化のなさと迫ってくる暑さで、頭がぼぉーっと白くなる、ある意味過酷なコースなのです……。

さて、いよいよ最終レグとなりました。ホールドタイムも入れて、ここまで約9時間40分。励ましながら私たちを引っ張ってきてくれたガイドのKimさんが残念ながら失権となり、最終レグはふたりだけで走行することになりました。遠藤さんの馬のオーナーさんから、完走が見えてきたからとにかく馬の脚を痛めないように、砂の深い部分はできるだけ常歩で進むよう指示をうけ、はやる気持ちを抑えながら、出だしの1時間近くをとにかくじっくり歩きました。最終レグは特に強い横風が吹く中のライドになり、正直なところ精神的に辛くなる部分も多々あったのですが、そんなとき、クルーの皆さんが各ポイントで手厚いケアをしてくれたことがとても励みになりました。また2頭の馬たちがとても良いパートナーシップで頑張ってくれたので、ライダー同士もお互いに元気づけながら、最後はみんなの待つゴールに帰ってくることができました。

スタートから13時間半後の午後7時29分。
はじめての海外ライドが無事に終了しました。
このライドに関わって下さったたくさんの方々のおかげです。
本当にありがとうございました。



Git-R-Dan Ride参加レポートA  by 遠藤乃里子

 4月11日 Git-R-Dan 120kmに参加した。昨年10月、初めてアメリカでのエンデュランス大会に参加したのが同じくGit-R-Danだったが、あえなく1レグで挫石による失権。夜明けを見ただけで終わってしまった。2度目の挑戦に、今度こそゴールまでたどり着きたいという思いは強かった。
 今回アラビアンホースランチの西山さんと私の馬の手配に関しては、アン・ホールが尽力してくださった。馬の経歴はもとより、オーナーの人柄が私たちに合うかまで考えて馬を探してくださったと聞いた。その心づかいに本当に感謝している。私はGさんからスティールという馬を借りることになっていた。事前に送られてきた写真を見て、もしや大きい馬なのではと心配していたが、対面してみると予想以上にデカイ。引き馬をしてもその大きな歩幅にほとんど引きずられているかのよう。Gさんは「ジェントルな馬だ。」としきりに言うが、そのデカさに圧倒されレース中に降りたら(落ちたら)絶対に1人では乗れない!と不安になってしまった。しかし、試乗してみると大きな体に似合わず脚の合図に敏感で素直に反応してくれた。Gさんが細かくスティールの扱い方、脚の位置などを教えてくれ徐々に信頼できるようになってきた。「足で蹴って走らせてはいけない。スティールは乗り手が走りたいと思っただけで察知して走ってくれる馬だから。」
 11日AM6:00いよいよスタート。西山さんと私はKIMさんという女性が先導してくれることになっていた。すでに先頭集団はスタートを切っており、私たちはまるで散歩に出かけるかのようにゆっくり静かにスタートした。KIMさんはゆっくりペースのトロットで約30分馬の体を温め、その後も一定ペースのトロットを続けるという教科書通りの走りだった。私の馬がややスピードを上げると、「まだ押さえて。スピードを上げるのは次のレグから。」と言われた。私たちを何とか完走させたいからととても大事に走ってくれているのが伝わった。砂漠の中の道を延々と走り続ける。「もしかして休みっていうものはないの?」と気がついた。KIMさんは常足を入れ休もうなんて全く考えていない様子。慣れないデカイ馬でのトロットに、1レグの途中からもう足が痛んできた。
 日が高くなり暑さも加わる。またこの日は朝から強風で、日差しは暑いが風が吹くと体が冷える状況。強い風に馬も横によれたり向かい風に押し戻されるように進んだり。景色はどこもかしこも砂漠。気分を変えようと遠くの山を見ても見えるのはいつも同じ山々。道ははるかかなたまでまっすぐ続いている。日本では体験できないこの単調なコースに精神的に参ってくる。また平坦とはいえ細かいアップダウンや砂の深いところがあるため微妙なスピード調節も必要だ。平坦なコースだから楽だという考えは大間違いだった。
 クルーポイントではいつもG夫妻が待っていてていねいに馬のケアをしてくれた。馬だけでなくライダーにまでも冷たい飲み物を用意してくれていた。そしていつも思いきりオーバーに私たちのライドを褒め励ましてくれた。その陽気な応援が、めげかけている私の気持ちをどれほど奮い立たせてくれたことか。
 KIMさんが失権してしまい最終レグは西山さんと2人で行くことになった。自分たちでしっかりコース表示を見て進まなければならない。日本と違いリボンの表示はわかりにくく、何度か立ち止まって地図を見たりして2人で確認しあって進んだ。そして日の落ちかかるころようやくゴールが近づいてきた。風がますます強まるなか向かい風にむかいながら「もう少しだからがんばろう。」とスティールに声をかけるとそれに応えるかのように歩を速めてくれる。長くて辛いライドの中で馬と通じ合ったこの瞬間が私にとってエンデュランスの魅力の一つだ。
 何とか日没前にゴール。西山さんと2人そろって完走できた。大勢の祝福のハグを受けながら、私一人で走ったのではなくチームの皆さんが私をゴールまで運んでくれたのだと実感した。体はボロボロ。途中「何でこんなことやってるんだろう。」などと思ったのに、ゴール後のこの達成感がたまらなくてまた次のエンデュランスに向かわせてしまう。これがエンデュランスに取り憑かれているということなのだろう。そしてこの取り憑かれた人々は世界中にいて、いつでもどこでも仲間として受け入れてくれるということを知った。



Git-R-Done 結果表

完走後の遠藤選手とSteel、遠藤選手とGT ガイドのKIMさんと西山選手、遠藤選手 騎乗中の遠藤選手とSteel
拡大 拡大 拡大
騎乗中の西山選手とGT
拡大

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